Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しんだちどり

死んだ千鳥

吉川 英治

Leggi 死んだ千鳥 (しんだちどり) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 15.539 caratteri · 32 schermate

Aozora Bunko

『……御免』

低い声で、暖簾の間から、侍はそう云ってみたが、小女も老婆も、うとうとと、快げに居眠っているので、黙って、傍らの木戸を自分で開けて、中庭へ忍び足に這入って行った。

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『……墨江、行燈が消えている。……行燈を灯けたらいいだろう』

伏原半蔵の声である。

四畳半の闇の裡に、ほんの一瞬の時が経つと、伏原の態度は、言葉つきまで、その前とは、まるで打って変っていた。

『…………』

『何をしているのだ、畳を撫でて。……櫛か、櫛ならここに落ちている』

伏原が、投げたのであろう、真っ暗な畳の上に、櫛の音が躍った。

病人のように疲れた白い手が――その櫛を探って、自分のみだれた髪を撫でていた。墨江の息づかいも、黒髪のように乱れていた。ひそやかに身づくろいを直している衣ずれの音が、かなり長い間だった。そして程なく、闇の中に、二人はしいんと黙り合ってしまった。

『……行燈をつけぬか、行燈を。――何ももう、済んでしまった事だ、恥かしがるにも及ぶまいが』

『…………』

『え、墨江』

『……わたくし……わたくしはもう、帰らせていただきます』