Classici giapponesi con furigana
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ははおや
母親
若杉 鳥子
Leggi 母親 (ははおや) di 若杉 鳥子 (わかすぎとりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7750 caratteri · 16 schermate
母親
若杉鳥子
みを子が会社を馘(くび)になってから、時々、母親の全く知らない青年が訪ねて来た。
朝早くやってくることもあれば、昏れてからくることもあった。青年は一度でも、「こんちは」とか、「御めん下さい」とかいったためしがない。人の出てくるまで、のっそりと土間の隅に立っていた。
「みをさんいますか?」
ただそれだけいった。額の高い、眼の黒い、やや猫背の男――しかし一度、会った人は忘れないであろう印象の強い男だ。
みを子は、その青年と二三分立ち話をして引ッ込んでくることもあれば、一緒に出て行って長いこと帰らないこともあった。
「あの人、何処(どこ)の人だえ?」
母親が何気ない風をしてきくと、
「もと、会社にいたひと。」
みを子も何気ない風にこたえた。
だが、会社員という風でもない――と母親は思った。学生のようでもあり、労働者のようでもある。その実、いつもキチンと背広にネクタイを結んでいる。
母親は何故かその青年を虫が好かなかった。その男がやってくる度に、娘を少しずつ自分の手からむしりとってでも行くような気がした。
「ああいう人とは、あんまり近しくしない方が、よかあないか。