Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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すいごういぶん

水郷異聞

田中 貢太郎

Leggi 水郷異聞 (すいごういぶん) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.516 caratteri · 36 schermate

Aozora Bunko

女も別のコップへその葡萄酒を注いで一口飲んだ。

「では、戴きます」

省三は俯向いてコップを執った。

「私は先生が雑誌にお書きになるものを平生拝見しております、それで一度、どうかしてお眼にかかりたいと思っておりましたところ、今日、先生の御講演があると家へ出入の者から伺いまして、どんなに今日の講演をお待ちしましたか、そして、その思いがやっとかなってみると、人間の慾と云うものはどこまで深いものでございましょう、遠くからお話を伺ったばかしでは、気がすまなくなりまして、こんな御無理をお願いしました、こんなお婆さんに見込まれて、さぞ御迷惑でございましょう」

女はまた笑った。省三も笑うより他にしかたがなかった。

「私は判りませんけれども、今日先生がなさいました、恋愛に関するお話は、非常に面白うございました。あのお話の中の女歌人のお話は、非常な力を私達に与えてくださいました。もっともこんなお婆さんには、あの方のような気の利いた愛人なんかはありませんが、あのお話で、つまらない世間的な道徳などは、何の力もなくなったような気がしますわ」

「あなたのように、心から、私のつまらない講演を聞いてくだされた方があると思うと、私も非常に嬉しいです、しかし、私がほんとうの講演ができるのは、まだ十年さきですよ、まだ、何も頭にありませんから」