Classici giapponesi con furigana
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すいごういぶん
水郷異聞
田中 貢太郎
Leggi 水郷異聞 (すいごういぶん) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.516 caratteri · 36 schermate
彼はそれを見つけると、「うむ」と云うような鼻呼吸とも唸り声とも判らない声をたててみたが、細君が顔をあげないのでしかたなしに書斎へ入って往った。
暗鬱な日がやがて暮れてしまった。省三は机の前に坐っていた。彼は夕飯に往こうともしなければ、細君の方からも呼びに来もしなかった。その重苦しい沈黙の中に小供の声が一二回聞えたがそれももう聞えなくなってしまった。
省三は気が注くと手で頬や首筋に止った蚊を叩いた。そして、思いだして鉛のようになった頭をほぐそうとしたがほぐれなかった。
不思議な呻吟のようなものが細ぼそと聞えた。省三は耳をたてた。それは玄関の方から聞えて来る声らしかった。彼は怖ろしい予感に襲われて急いで起ちあがって玄関の方へ往った。
青い蚊帳を釣した奥の室と茶の間の境になった敷居の上に、細君が頭をこちらにして俯伏しになっている傍に、壮い女が背をこっちへ見せて坐っていたがその手にはコップがあった。省三は何事が起ったろうと思い思いその傍へ往った。と、壮い女の姿は無くなって細君が一人苦しんで身悶えをしていた。
「どうした、どうした」
その省三の眼に細君の枕頭に転がっているコップと売薬の包らしい怪しい袋が見えた。