Classici giapponesi con furigana
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すいめんにうかんだおんな
水面に浮んだ女
田中 貢太郎
Leggi 水面に浮んだ女 (すいめんにうかんだおんな) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4721 caratteri · 10 schermate
婢は平三郎の傍へ坐って手にしたものをまえへ置いた。平三郎は酒が嫌いであった。それに従来とてもかき餅などは時おり持たしてよこすことがあっても、酒をよこしたことがなかったので彼は不思議に思った。
「俺が酒を飲まんことは、母上も知っておるはずじゃが、なぜ酒をくだされたろう」
「何時も貴方がお堅くしておられますから、すこしは、浮うきなされるようにと、それで奥様からくだされたものでございましょう」
婢はこう云いながら盃を持ってそれを平三郎の前へだした。
「さあ、一つおあがりなさいませ」
「では、一つ飲もうか」
平三郎はその盃を手にした。婢は燗鍋を執って酌をした。平三郎はそれをぐっと一口に飲んだ。酒は苦かった。
「もう一ぱいおあがりなさいませ」
婢はまた酌をしようとした。平三郎はもう受ける気はなかった。
「もう好い、俺は酒が飲めんから、注いでもいかん」
平三郎は盃を下へおこうとした。
「それでも、奥様のせっかくの思召でございます、もう一つ」
婢は平三郎の置こうとした盃へまた注ぎかけた。
「そうか、それでは」
平三郎はしかたなしにその酒を注がして、口の縁へ持って往ったが厭でたまらない。