Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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えいじつしょうひん

永日小品

夏目 漱石

Leggi 永日小品 (えいじつしょうひん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 50.000 caratteri · 100 schermate

Aozora Bunko

井深はきっと安いものだと鑑定した。聞いて見ると一円と云うのに、少し首を捻ったが、硝子も割れていないし、額縁もたしかだから、爺さんに談判して、八十銭までに負けさせた。

井深がこの半身の画像を抱いて、家へ帰ったのは、寒い日の暮方であった。薄暗い部屋へ入って、さっそく額を裸にして、壁へ立て懸けて、じっとその前へ坐り込んでいると、洋灯を持って細君がやって来た。井深は細君に灯を画の傍へ翳さして、もう一遍とっくりと八十銭の額を眺めた。総体に渋く黒ずんでいる中に、顔だけが黄ばんで見える。これも時代のせいだろう。井深は坐ったまま細君を顧みて、どうだと聞いた。細君は洋灯を翳した片手を少し上に上げて、しばらく物も言わずに黄ばんだ女の顔を眺めていたが、やがて、気味の悪い顔です事ねえと云った。井深はただ笑って、八十銭だよと答えたぎりである。

飯を食ってから、踏台をして欄間に釘を打って、買って来た額を頭の上へ掛けた。その時細君は、この女は何をするか分らない人相だ。見ていると変な心持になるから、掛けるのは廃すが好いと云ってしきりに止めたけれども、井深はなあに御前の神経だと云って聞かなかった。