Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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かじか

河鹿

岡本 綺堂

Leggi 河鹿 (かじか) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 5671 caratteri · 12 schermate

Aozora Bunko

C君は語る。

これは五六年前に箱根へ遊びに行ったときに、湯の宿の一室で同行のS君から聞かされた話で、しょせんは受売りであるから、そのつもりで聞いて下さい。

つい眼のさきに湧きあがる薄い山霧をながめながら、わたしはS君と午後の茶をすすっていた。石にむせんで流れ落ちて行く水の音もきょうは幾らかゆるやかで、心しずかに河鹿の声を聞くことの出来るのも嬉しかった。

「閑静だね。」と、わたしはいった。

「うむ。こうなると、閑静を通り越して少し幽寂を感じるくらいだよ。箱根の中でもここらは交通が不便で、自動車の横着けなどという、洒落れた芸当が出来ないから、成金先生などは滅多に寄付く気づかいがない。われわれの読書静養には持って来いというところだよ。実際、あの石高路をここの谷底まで降りてくるのは少々難儀だけれど、僕は好んでここへくる。来てみると、いつでも静かなおちついた気分にひたることが出来るからね。」

S君は毎年一度は欠かさずにここへ来るだけあって、しきりにこの箱根の谷底の湯を讃美していた。霧はだんだんに深くなって、前の山の濃い青葉もいつか薄黒い幕のかげに隠れてしまった。