Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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おんせんだより

温泉だより

芥川 竜之介

Leggi 温泉だより (おんせんだより) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 6095 caratteri · 13 schermate

Aozora Bunko

「あ」の字の旦那にはまことに、まことに面目ありません。のこりの金はみなお前様のものにして下され。一人旅うき世をあとに半之丞。〔これは辞世でしょう。〕おまつどの。」

半之丞の自殺を意外に思ったのは「な」の字さんばかりではありません。この町の人々もそんなことは夢にも考えなかったと言うことです。若し少しでもその前に前兆らしいことがあったとすれば、それはこう言う話だけでしょう。何でも彼岸前のある暮れがた、「ふ」の字軒の主人は半之丞と店の前の縁台に話していました。そこへふと通りかかったのは「青ペン」の女の一人です。その女は二人の顔を見るなり、今しがた「ふ」の字軒の屋根の上を火の玉が飛んで行ったと言いました。すると半之丞は大真面目に「あれは今おらが口から出て行っただ」と言ったそうです。自殺と言うことはこの時にもう半之丞の肚にあったのかも知れません。しかし勿論「青ペン」の女は笑って通り過ぎたと言うことです。「ふ」の字軒の主人も、――いや、「ふ」の字軒の主人は笑ううちにも「縁起でもねえ」と思ったと言っていました。

それから幾日もたたないうちに半之丞は急に自殺したのです。