Classici giapponesi con furigana
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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Leggi 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 71.989 caratteri · 144 schermate
そうして、悪夢に魘されてびっしょりと冷汗を掻き、瑠璃光丸に呼び醒まされて、蓐の上に飛び起きる事などもある。
「そなたは今しがた、妙な譫語を口走って呻って居た。何ぞ物怪にでも襲われたのか。」
こう云って尋ねられると、千手丸は耻かしそうに項を垂れて、
「まろは女人のまぼろしに責められたのだ。」
と、声をふるわせて答えるのである。
日を経るまゝに、だん/\子供らしい快活と単純とが、千手丸の素振や表情から失われて行った。隙さえあれば、彼はこっそり瑠璃光丸の目を盗んで、大講堂の内陣に彳みながら、観世音や弥勒菩薩の艷冶な尊容に、夢見るような瞳を凝らしつゝ、茫然と物思いに耽って居た。そう云う折に、彼の頭を一杯に填めて居るものは、唯識論の「外面似菩薩」の一句であった。内心は夜叉に等しいにもせよ、又その姿は幻に過ぎないにもせよ、この山の数多の堂塔におわします諸菩薩のような人間が、世の中に生きて居るとしたら、どんなに端麗な、どんなに荘厳なものであろう。こう考えると、女人に対する恐怖の念はいつの間にか消滅して、跡に残るのは怪しい憧れ心地であった。薬師堂、法華堂、戒壇院、山王院、―――彼は山内到るところの堂宇をさまようて、其処に安置してある本尊だの、脇士だの、間を飛する天人の群像だのを、飽かずに眺め入りながらうと/\と日を送った。