Classici giapponesi con furigana
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しおかぜ
潮風
豊島 与志雄
Leggi 潮風 (しおかぜ) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.018 caratteri · 25 schermate
棚の上に、支那の陶器の花瓶があった。いつも使われることがないので、俺はその中に綿をもちこんで、安楽な居場所を拵えておいた。その晩も、夜遅く、その中にはいってうとうとしていると、急に何か物音や人声がしたので、花瓶の口からのび上って、見ると、片野さんがとびこんできてるのだった。
片野さんは酔っていた。一つ所に立ってることが出来ず、それかって椅子に掛けるのも面倒くさいらしく、ストーヴのまわりをふらふら廻っていた。
「今迄、どこを歩いてらしたの。」と芳枝さんが、きつい眼付をしてみせた。
「今迄? 何をねぼけてるんです。歩いてるのは今だけだ。第一、どこか、ぬれてますか。さあ、ぬれてるかぬれてないか、歩いてた証拠があるかないか、見てごらんなさい。だが、実は歩きたかった。霧のような雨が降っていて、いい晩ですよ。そいつを、むりに自動車にのっけるもんだから……。意趣晴らしだ、一杯のまして下さい。」
「だめだめ、もう何時だと思って?」
「何時だって……。一体、女にとっては、何よりもかによりも、時間が一番大切らしい。それが、癪にさわることの一つ。それから……。」
「それから?」