Classici giapponesi con furigana
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むだい
無題
宮本 百合子
Leggi 無題 (むだい) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 5172 caratteri · 11 schermate
人間である。万人が万人の人間である。此の地殻の上に何処からか生れ出たものは、その出生の地を、彼等の魂のどん底から剥ぎ取る事は出来ないのである。
静かな夜の中に坐して、記憶の裡に蘇返る「祖国」に、慄えるような愛着と、叫び度くなる程の嫌厭と恐怖とを感じる時、私は此の感動が、果も無い空間から空間へと、反響するのを感じる。
私共は「日本人」だから「日本」を思うのでは無い。「米国人」だから、「米国」の土に涙を垂れるのでは無い。人間だからである。人だからである。名は約束である。日本と云うのも、支那と云うのも、又は英吉利と云うのも、丁度、数字が、太古からの約束である如く、只一つの約束に過ぎないのではあるまいか、
彼等が、そして私共が、地上に於て最初の呼吸をした其一点――地理的に、歴史的に或る伝統を持った、地上の其の一点が、総て生れ出た者にとって、忘れ得ぬ「祖国」と成るのである。
私が今斯うやって、双眼に涙を泛べながら、思いに沈んで居る時、遠い海を越え、野山を踰えた彼方の彼方の何処かにも、矢張り、私と同じ恐れと愛に慄えながら、彼等の「祖国」を思う人は無いだろうか。