Classici giapponesi con furigana
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ちちのてがみ
父の手紙
宮本 百合子
Leggi 父の手紙 (ちちのてがみ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2317 caratteri · 5 schermate
ユリチャン、コレガオトーサマノ、ノッテイルフネデス。
片仮名でそういう文句をかいた欧州航路の船のエハガキが、五つの私へ父からおくられて来た。父はイギリスへ行くところで、まだ字の読めなかった娘へも最初のたよりを、そのようにして書いてよこしたのであった。
灯がその火屋の中にともるとキラキラと光るニッケル唐草の円いランプがあって、母は留守の父のテーブルの上にそのランプを明々とつけ、その上で雁皮紙を詠草のよう横に折った上へ、細筆でよく手紙を書いた。白い西洋封筒は軽い薄い雁皮の紙ながら、ふっくりと厚くて、その一封の便りが印度洋を越えてロンドンまで行くということが、母には判っているような心許ないような気がしたのだろう。いつも封じめには封蝋の代りに赤だの青だののレースのような円い封印紙が貼りつけられた。小さい私は、そのテーブルのわきに立って、やがてオトーサマと紙からあふれるような字を書くことを習った。あとにはいつもつづけて、ハヤクオカエリナサイ、と書いた覚えがある。いま思えば、それは五つの娘の心の願いというばかりではなかったであろう。
足かけ五年の旅行の間、父はどっさりいろんなエハガキによく筆まめに娘へのたよりをくれた。