Classici giapponesi con furigana
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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
Leggi 犀星王朝小品集 (おぎふくうた) di 室生 犀星 (むろうさいせい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 105.794 caratteri · 211 schermate
昼下りのうららかな日のさす寝殿でいつになく
「山吹」
と、お呼びになるお声がきこえて来ました。そのお声はいつもとちがった改まった、いかにもご用ありげなお言葉に冴えたところがございました。うろたえて参りますと、紀介様は晴れやかな、何ひとつ曇ったところのないお顔付でいられました。それはお心もそのように晴れやかであることに、すぐ、気づくようなお元気さでございました。
「いつかの若い武士のはなしなんだが、あの人から便りがあるか。」
突然なおたずねだったものでございますから、あるいは、わたくしはその折に顔をあからめたかも分りません。あまりに不意な、あまりにだしぬけでございましたから、故意にそう仰せられるのではないかと、そうも取れるのでございました。
「あれ以来おたよりとては、絶えてございませぬ。」
わたくしは言葉をついでおたずねしないわけには行きませんでした。
「いまごろ何故そうおたずねでございます。」
「それについてそなたの気を悪くしない程度で、きいていてもらいたいことがある。」
そう仰有る紀介様のお顔にも、依然、少しもみだれた色がうかばないでいて、かえってお眼はやわらかに澄んで見えていました。