Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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おぎふくうた

犀星王朝小品集

室生 犀星

Leggi 犀星王朝小品集 (おぎふくうた) di 室生 犀星 (むろうさいせい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 105.794 caratteri · 211 schermate

Aozora Bunko

遂にきょうの紀介様のお言葉にあらわれたと申していいような気がします。ここまで紀介様は平然と歩いて来られ、そのために少しもお心をいためはなさらなかったことさえ、わたくしには人の心の偉さが感じられてまいりました。かえってわたくしにそれをお明かしになることが、御気苦労があったように思われます。それはわたくしの至らなかったことばかりでなく、わたくしはまだ紀介様のような愛情の高さにまで及びつけないでいたからでございます。山々に入りお薬をとっていたわたくしのあるかないかの苦心よりも、紀介様はお床のうえでわたくしの十倍も二十倍も高いところにお上りになり、わたくしを見つめていられたのでございました。

「山吹、わしのいったことがよく分ったか。」

わたくしは何の躊躇いもなく、手をついて申し上げました。

「よく分りましてございます。」

「あの武士はいま何処にいるのか。」

「故郷にいらっしゃるように思われます。」

「川べりの何とかいったな。」

「立田川でございます。」

「あそこの景色はいまも眼にあるね、景色というものは見たときよりも、思い出すと美しい。」

紀介様のお顔はやはり平明な落着きを見せていられ、わたくしに言いたいことを仰有ったあとの満足さでかがやいていられました。