Classici giapponesi con furigana
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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
Leggi 犀星王朝小品集 (おぎふくうた) di 室生 犀星 (むろうさいせい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 105.794 caratteri · 211 schermate
漠然と波を見入っては考えていた。一体、こんな寒々とした少しの温かみのない曇り日の景色というものには、どうしても隠しきれぬほど悒しい感じにとらえられるものであった。先刻から夫の顔をできるだけ見ないようにつとめていたのが、ふいに見るでもなくその横顔を見てしまって、なにか驚くようなはっとした気持であった。茫やりとおなじ水の面を眺めている夫は何を考えているのか、少しも生気というものがなく顔は青みをふくんで淋しい以上の淋しい感銘であった。こんな虚しい何も浮んでいない顔を見たことがはじめてだった。どんな困窮の日にもこんなさびしい顔色はしていなかったのだ。もう、別れるからだろうか、そうとしか、筒井には解きがたい空虚さであった。
渡舟は同時に着いて乗客をすっかり吐き出して終うと、舳を上流と下流に向けてふたたび客を乗せた。
「さあ、」
男はなんとなくそういって起ち上り、女を先に立たせた。
「では気をつけてな。」
「はい、おしずかにお越しくださいませ。」
筒井は腰を折って一揖した。男もちょっと頭をこころもち下げるようにして、それぞれの渡舟に乗りこんだ。筒井は夫の顔を先刻のようにもはや見ることはなく、夫の烈しい眼がしらを受けるだけであった。