Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
Leggi 白髪鬼 (はくはつき) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 112.046 caratteri · 224 schermate
棺の中へ手をさし入れたままの姿勢でグッタリとなってしまった。だが今から思うと、それがわしにとっては非常な仕合せであった。
あの時、棺の中に少しの腐肉でも残っていたら、わしはきっと、その蛆のわいた人肉を、手掴みにして、ムシャムシャやっていたに違いないからだ。人として人の肉を啖う。世にこれ程罪深く、浅間しいことがあるだろうか。わしはもう、ただそれ丈けの理由で、二度と世間に顔を曝す勇気が失せてしまったであろう。
併し、それはあとになって考えること、当時は心がひもじさで一杯になって、良心もなにも、どっかへ押し出されてしまっていたので、仕合せに思うどころか、絶望の極、メソメソと泣き出したものだ。泣いたとて、もう涙も流れぬ。声も出ぬ。顔の筋肉を出来る丈けしかめて、泣いている表情をするばかりだ。
暫くは、そうしてグッタリとなっていたが、何となくあきらめ切れぬ心が湧いて来た。人間の生きようとする執念深さはどうだろう。わしは又燭台を握って立上った。筋肉に立上る丈けの力が残っていた訳ではない。ただ生きよう生きようともがく本能力が、わしを動かしたのだ。
わしは最早や人間ではなかった。