Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(四) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 229.324 caratteri · 458 schermate
「……妙子っ、妙子っ。……どうしやったのじゃ。気をたしかにして給い」
おそらくは婦人は姑女であり、妙子とよばれた妙齢の女性のほうは彼女の息子の嫁であったとみえる。
姑女は身をふりしぼって、なおも異常な容子から醒めない嫁の名をよびつづけていたが、とつぜん、どっちからともつかず、かなしげな悲鳴がそこに流れたとおもうと、
「ホ、ホ、ホ、ホ」
妙子は袂の片方を空へ振って仰けざまに笑っていた。
そして、何が彼女のひとみには見えるのだろうか、
「ちョめ」
と、袂で交互にそこらを打ち払い、また、やにわに、そこの身丈よりは低い竹矢来を破ッて、さらし首の梟けならべてある台へむかって突進しかけた。
姑女は刎ねとばされて、俄に起ちもできずにいたが、さっきから犬射ノ馬場の隅小屋で見ていた探題所の不浄役人の二、三はすぐ駈けつけて来て、
「これっ」
「何をし召さる」
と、抱きとめた。
といっても、妙齢なひとではあり、粧いからみても、いやしからぬ家柄の息女とは思われたので、手加減をしていたためか、逆に彼らは、おもちゃのように手玉に取られて地へ振り捨てられ、
「ホホホホ」
狂女は一転、ヒラと、街へ走り出していた。