Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

Leggi 私本太平記(四) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 229.324 caratteri · 458 schermate

Aozora Bunko

かりにも武門が、病気だからとて、いちいち戦場を退いていいのか。恥を知らんのか、恥を」

「いや……」と、使番の武士は、まッ青になって、主人のために釈明しぬく風だった。

「元々、わが殿には、瘧と申すご持病があったのです。とは申せ、鎌倉どののお下知でした。そのムリを押してのご出陣でしたので、この山間の冷えやら湿やらの不養生には耐え難く」

「だまれ」

「はっ」

「不養生とは何事だ。この艱苦は全軍すべてがしている艱苦だ。みな、累代の御恩にこたえんとする今日の戦いだわ。しかるに、やれ病気の、やれ国元の変事のと、浮腰を言い出すなどはあきれ果てる。言語道断、人へも恥じろ」

「では、おゆるしの儀、相なりませんか」

「ならん」

と、手にしていた彼の主人の帰国願書を、捻じ縒ッて、

「こんな物は、いくさ奉行として聞きとどけ難い。持って帰れ」

と、使番へ突っ返した。

これは今暁のことだった。

けれど、その前日にも、同様なことをいって来た武族がある。口実はさまざまだが、帰するところみな国元不安の動揺だった。――はやくも、先帝の隠岐脱出、各地の宮方蜂起――などのことが、誰からともなくつたわっていたらしい。