Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(四) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 229.324 caratteri · 458 schermate
藤夜叉はそれをすぐにはひらいて見なかった。なつかしさやら、また自分のくるしみをどう解いてくれたやら、すぐにも見たいのは山々だったが、行成風の美しいそして余りに上手な尼の仮名文は彼女の力ではいつも判読に骨が折れて、まどろいかなしみを味わうのだった。
で、さりげなく、
「さだめし、おふた方はいつもお倖せでいるのでしょうね。覚一さんも日ごと琵琶のお師の門へお通いになったりして」
「どうして、都の内も昨今は、それどころではありませぬ。みかども公卿も六波羅へご疎開の騒ぎですし、草心尼さま母子も、羅刹谷のおくへ移されたような心細い有様ですから」
「でも、あのおふたりを思うといつも羨ましい。なんのご苦労さえないようにみえる。それにひきかえ、和子と私は、よほど業の深い生れつきなんでしょうね」
「いやいや、やがては、晴れてよいご身分になるはずです。ただこの大戦がおさまるまでのご辛抱だ。それはしかし、やさしいご辛抱ではありませぬが」
そこへ、不知哉丸がまた、駈けもどって来た。小袖の片肌をぬぎ、弓をかかえて庭もから、
「藤夜叉」
と、昂奮した声で、
「右馬介も行ってごらん。いまね、鎌倉のお使いが速舟で浜へ着いたのだって。