Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

Leggi 私本太平記(四) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 229.324 caratteri · 458 schermate

Aozora Bunko

すこしでも未練をもつ方が負けになる。もう色気はもたん」

と、腹をすえたふうだった。

とはいえ、その報復を急ぐのは危険と思う。こっちの脛にもキズはある。まず高時の耳へ讒をくにも春の日永のことでいい。――として彼は今日も、舶載の支那鉢に、ひと株の福寿草を移し植え、それを卓の春蘭とならべて、みずから入れた茶を喫しながら、ひとり閑を養っていた。

姿は、風雅である。

しかし彼の心には、彼も気づかぬ本然の妄執がいつかうごいていた。春蘭のしなやかな葉も刃と刃にみえだしてくる。支那鉢の朱泥のいろまでが、高ノ師直の肌や体臭をおもわせる。

あんな大それた無礼きわまる所行は、師直一個の量見から出たものではよもあるまい。やらせたのは高氏にきまっている。――そして大蔵の足利屋敷では、あのあと家中一同で手をたたいておれをわらったものだろう。

「……よろしい、きっとこの返報は」

つい瞋恚に燃えやすい怏々の胸を、彼も意識では、ふり払おうとするのらしい。一日不愉快におくるのは一日の損だ、と彼は知っている。しんそこの風流ではなく、功利的な消閑なのだ。こんどは細ながい筥からこれも元の舶載らしい水墨画を解き出して、壁にかけ、脇息に倚って、ながめ入った。