Classici giapponesi con furigana
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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
Leggi 聞書抄 (ききがきしょう) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 108.821 caratteri · 210 schermate
戦場に於いてさま/″\な艱難を忍びますことは武士の常でござりますから、左程骨身にはこたえませぬが、荒々しいことや凄じいことより知らぬ者が蘭麝のかおりなまめかしい御前へ出ましては、勝手が違うて窮屈な心地がいたし、立居が固くなりますのに、まして見える眼を見えないように装うている辛さを、お察しなされて下さりませ。これがほんとうのめくらであるなら、なか/\気が楽でござりましょうに、なまじいに眼が見えますと、見まいとしてもあたりのものを見ない訳には参りませぬ。そのうえ見るとは申しましても、まわりの人に悟られぬように薄眼を開けて、睫毛と睫毛の間から、ほんの僅かな幅のものを、戸の節穴から覗くくらいにぼんやり見るだけでござりますから、物の色あいや形などが、一度にひろ/″\と見るのとは様子が違うておりまして、そのために尚、金銀をちりばめました壁や、襖や、調度のたぐいや、皆様方のお召しになっていらっしゃる唐織や綾錦などが、ひとしお美しく、此の世のものとも覚えぬように瞳に映ったのでござります。愚僧は何処へ眼を向けましても、見えるものゝ結構なのに胆を消し、玉の階、黄金の梁とはこう云う御殿のことであろうかと、夢に夢見る思いがいたして、ゆくりなくも斯様な所へ御奉公に罷り出た身のなりゆきの不思議さを驚くばかりでござりましたが、まあそれ