Classici giapponesi con furigana
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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
Leggi 聞書抄 (ききがきしょう) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 108.821 caratteri · 210 schermate
、小さな如来を安置した佛壇の中に「江東院正岫因公大禅定門」と記した位牌がある、それぞ正しく三成の法名であったから、源太夫乃ち起ってその前に至り、恭しく香を拈じて礼を作した。その様子を見てから尼の態度がやゝ和らぎ、ぽつ/\問いに応ずるけはいを示したとある。
因みに、右位牌の法名は三成が帰依していた大徳寺の圓鑑国師が選んだもので、国師は石田氏滅亡の後、深く生前の交誼を憶い、或は一門の影塔を作り或は三成の遺骸を収めて墓碑を建立し、常に冥福を祈っていたが、慶長七年十月朔日、三玄院に於いて故人の三回忌を営んだ時の偈に曰く、
自咲一炉焼二返魂一 早梅香動出二前村一
即今欲レ問三年別 十月桃花終不レ言
と。蓋し国師のような出世間の禅僧が此の風雲児の霊を弔い、法要を行うことに不思議はないが、徳川氏の覇業が定まった当時はたとい親類縁者と雖も、誰あって墓参りなどをする者もなく、一片の香華を手向ける人もなかったであろう。されば路傍の人に過ぎない源太夫が父の位牌を拝んでくれたのを見て、はしなくも尼が感激したのは察するに難くなく、それからだん/\と、折角訪ねてくれた人の好意にほだされながら語り始めたのであったが、それでも源太夫の質問が尼自身のことに及ぶと、言葉を濁して要領を得させなかった。