Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ききがきしょう

聞書抄

谷崎 潤一郎

Leggi 聞書抄 (ききがきしょう) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 108.821 caratteri · 210 schermate

Aozora Bunko

けれども、その時に斯う、ぼんやりと分ったのは、私の村から有田郡の方へ抜ける山路にヤカンダニと云う谷があって、めったに人の通らない淋しい所なんですが、そこをその漆掻きは前に一遍あるいたことがある。で、そう云う時にもいくらかその記憶が残っていたものと見えて、カノマツバラだと云うけれども、どうも此処はヤカンダニのようだから、「ヤカンダニじゃあないか」と云うと、「なんだ、お前はヤカンダニを知っていたのか。ではもっと外の所へ行こう」と云って、又方々を歩き廻って、「さあ、どうだ、此処がカノマツバラだ」と云われて見ると、今度は覚えのない土地で、松がずうっと生えていて、たしかに松原の景色になっている。しかしそう云う間にもときどき正気に復るらしく、己は狐に欺されているんだと云う考えがふいと起ることがあって、三人の小男の様子なども、人間の姿をしているように思えながら、どうかした拍子に尻尾が見える。はっきり見えるんではなしに、チラチラと斯う、見えたり見えなかったりするような工合なんですな。要するにまあその時分からそろそろ意識が回復して来たんで、ヤカンダニを通ってからも暫く何処か無茶苦茶に引っ張り廻されていたようですが、そのうちに、村にイカキ山と云って、笊のような恰好をした山があるんで、そこを通った時は、此処はイカキ山だなと云う