Classici giapponesi con furigana
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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
Leggi 聞書抄 (ききがきしょう) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 108.821 caratteri · 210 schermate
「いえ、いえ」
と、乳母が慌てゝ云うのを抑えて、
「しかし、お女中、愚僧は只今お身たちが話しておいでなされたことを、聞くとものう聞いていたのでござります。されば、ほんとうのことを仰っしゃって下さりませぬか」
そう云っても相手が無言でふるえているのを、行者はけはいで察したのであろう、ほっと大きな溜息をついた。
「いや、よう分りました、木の根草の根にも心を置かれる御身分として、斯様な所で出しぬけにお尋ね申しても、仰っしゃって下さらぬのが当り前でござりましょう。したが、のう、お女中、愚僧とてもずっと昔は治部殿に御恩もあり、お恨みもござりましたけれども、此のような仕儀におなりなされては、たゞもう後生を弔うて上げたい一念ばかりでござります。それにつけても、愚僧がいつも独りごとに申していた歌がござりますが、お聞きなされたことがござりますかな」
そう云ってから、行者はあの、「世の中は不昧因果の小車や」と云う文句を、ゆっくりと二度、平素のひとりごとのような調子でなしに、哀れっぽい節をつけて歌った。
「どうでござります、此の歌のこゝろが、今こそ世間の人たちに分ったでござりましょう。