Classici giapponesi con furigana
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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
Leggi 聞書抄 (ききがきしょう) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 108.821 caratteri · 210 schermate
そうして、何か物を云ってくれるときはまだよいけれども、どうかすると長い間黙って撫で廻しているのである。めくらであるからそう云う風にしなければ娘の愛らしさが呑み込めないのも尤もであるが、事に依るとめくらであることを幸いに、柔かい髪や肌の感触をひそかに楽しんでいたのかも知れない。だがそうとばかりも思えないのは、そんな場合に何かしら別なことを考えながら遠い所へ心を馳せているような様子が見えて、とき/″\ぽたりと、盲いた眼から涙を落すことがあった。一度娘は、
「あれ」
と云って、頭に落ちた雫を拂って、
「何を泣いているの」
と、行者の顔を振り仰ぐと、行者は慌てゝ、
「おゝ、御免なさりませ」
と云った。そうして急にひしと娘を抱きしめて、の生えた痛い顔で頬ずりをして、
「お姫さま、―――こうしてお姫様のお髪を掻いておりましたら、とんでもない昔のこと、悲しいことを思い出したのでござります。それにつけてもお姫様は、御無事に大きゅうおなりなされて下さりませや」
と云いながら、続けてはら/\と涙を落した。
初めから娘を「お姫さま」と呼び、治部少輔の忘れがたみであることを感づいていた行者に対して、改めて乳母が真実を打ち明けたことがあったのか、それともそんな話はなしに、自然と行者の推測を肯定した形になったのか、そこのところは娘の記憶が不確かだけれども