Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

Leggi 花と龍 (はなとりゅう) di 火野 葦平 (ひのあしへい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 410.131 caratteri · 824 schermate

Aozora Bunko

その日の夕刻、江崎満吉の使いといって、一人の俥ひきが、新仲町の玉井組を訪れて来た。

緑色に塗られた大きな公立病院の建物が、黄昏の光の中に、聳え立っている。明治建築の様式に、いくらか新し味を加えた尖塔の中心に、痰壺のような白い陶器の飾りがある。

病院の横は寺である。墓地には古ぼけた墓石がならび、銀杏の樹の下に、鐘楼がある。いつぞや、パナマ丸の荷役をするため、燈台沖まで、伝馬船で漕ぎだしたとき、朝の五時になって、金五郎たちの聞いた鐘の音は、この安養寺の鐘楼で、撞き鳴らされたものであった。

新仲町は、この病院と寺とに接した狭い通りだ。玉井組は、病棟から、石炭酸のにおいや、患者の呻き声の聞えて来るような位置にあった。

がらんとした二階建である。玄関の入口右側に、「玉井組事務所」の看板、左に「玉井金五郎」の表札、いずれも、金五郎が、例の、独特な肉太字で書いたものであった。

「おごめんなさい」

玄関に入った五十年配の俥ひきは、ずらりと、壁間にかけられてある「玉井組」名入りの弓張提灯を見た。そして、あまかに、ひっそり閑としているのが不審らしく、小首をひねった。