Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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くさまくら

草枕

夏目 漱石

Leggi 草枕 (くさまくら) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 84.485 caratteri · 170 schermate

Aozora Bunko

冷やかに艶なる月下の海棠には、ただ愛らしい気持ちがする。椿の沈んでいるのは全く違う。黒ずんだ、毒気のある、恐ろし味を帯びた調子である。この調子を底に持って、上部はどこまでも派出に装っている。しかも人に媚ぶる態もなければ、ことさらに人を招く様子も見えぬ。ぱっと咲き、ぽたりと落ち、ぽたりと落ち、ぱっと咲いて、幾百年の星霜を、人目にかからぬ山陰に落ちつき払って暮らしている。ただ一眼見たが最後! 見た人は彼女の魔力から金輪際、免るる事は出来ない。あの色はただの赤ではない。屠られたる囚人の血が、自ずから人の眼を惹いて、自から人の心を不快にするごとく一種異様な赤である。

見ていると、ぽたり赤い奴が水の上に落ちた。静かな春に動いたものはただこの一輪である。しばらくするとまたぽたり落ちた。あの花は決して散らない。崩れるよりも、かたまったまま枝を離れる。枝を離れるときは一度に離れるから、未練のないように見えるが、落ちてもかたまっているところは、何となく毒々しい。またぽたり落ちる。ああやって落ちているうちに、池の水が赤くなるだろうと考えた。花が静かに浮いている辺は今でも少々赤いような気がする。