Classici giapponesi con furigana
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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
Leggi 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 133.224 caratteri · 269 schermate
第十 坂
近頃日和下駄を曳摺って散歩する中、私の目についた崖は芝二本榎なる高野山の裏手または伊皿子台から海を見るあたり一帯の崖である。二本榎高野山の向側なる上行寺は、其角の墓ある故に人の知る処である。私は本堂の立っている崖の上から摺鉢の底のようなこの上行寺の墓地全体を覗き見る有様をば、其角の墓諸共に忘れがたく思っている。白金の古刹瑞聖寺の裏手も私には幾度か杖を曳くに足るべき頗る幽邃なる崖をなしている。
麻布赤坂にも芝同様崖が沢山ある。山の手に生れて山の手に育った私は、常にかの軽快瀟洒なる船と橋と河岸の眺を専有する下町を羨むの余り、この崖と坂との佶倔なる風景を以て、大に山の手の誇とするのである。『隅田川両岸一覧』に川筋の風景をのみ描き出した北斎も、更に足曳の山の手のために、『山復山』三巻を描いたではないか。
第十 坂
前回記する処の崖といささか重複する嫌いがあるが、市中の坂について少しく述べたい。坂は即ち平地に生じた波瀾である。平坦なる大通は歩いて滑らず躓かず、車を走らせて安全無事、荷物を運ばせて賃銀安しといえども、無聊に苦しむ閑人の散歩には余りに単調に過る。