Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あしはみていた

葦は見ていた

山本 周五郎

Leggi 葦は見ていた (あしはみていた) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.985 caratteri · 36 schermate

Aozora Bunko

「おれは恥ずかしい、ただもう恥ずかしい」

「うちへゆこう」と東次郎が云った、「うちへいって朝飯を食おう」

「ゆける筈はないじゃないか」

「ゆけなくってさ」と東次郎が云った、「いま藤吉は恥ずかしいと云った、しかしそれはちがう、恥ずかしいというのは昨日までの藤吉だ、いまの藤吉には恥ずかしいことなんかありゃあしない、いっしょにゆこう」

「有難いが、それだけはできない」

「おれはつれてゆくよ」

「それは残酷だ」と計之介は云った、「あれだけの醜態をさらして、ほかの人たちはともかく、深江さんの前へ出られる道理がない、それはあんまり残酷だ」

「いっしょにゆこう」東次郎は云った、「腫物を切開するときには、思いきって、一遍にやるものだ、なし崩しにやっても痛みが減りはしない、恥ずかしいおもいも一遍にしてしまえ、そうすればさっぱりするよ」

計之介は不決断に頷いた。

「さあゆこう」と東次郎が云った、「おれがうまくやるよ」

二人は歩きだした。空はすっかり明るくなり、風のために、もう霧も殆んど吹きはらわれていた。丘の下り口までゆくと、朝の光りをあびた城下町の向うに、鶴ヶ岡の森と、城の天守閣が爽やかに眺められた。