Classici giapponesi con furigana
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にじのはし
虹の橋
久生 十蘭
Leggi 虹の橋 (にじのはし) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 15.038 caratteri · 30 schermate
なにか、ひっかかりがくるのではないかと不安になりながら、兵庫版を注意して読んでいたが、でたらめな住所を書きつけたのだとみえて、心配していたようなことはなにも起らず、真山あさひと須田栄太郎は、身元不明のまま、行路病者として洲本市役所にひきつがれて、千草の無縁墓地に埋葬され、それで、観光地のありふれた心中事件として終止符が打たれた。
「真山あさひなんていう女は、無くなったって惜しいことはない。思えば、あわれなやつだったけど……」
部屋の隅に千代のスーツ・ケースが置かれてある。あの夜、千代が浴衣を出したとき、戸籍謄本と履歴書らしいものが入っていたのを見た瞬間から、千代はどんな過去をもった女なのか知りたいというひそかなねがいがあった。あさひはスーツ・ケースを手で撫でていたが、どうせ見ずにはいられないのだと思って、蓋をあけた。
北川千代……昭和五年生れ。本籍は江東区。祖母はフサ。父は源次郎。母の嘉代は長尾清太郎という人の二女で、大正十三年に源次郎と結婚し、翌年、源一を生んでいる。父の源次郎と母の嘉代は昭和二十年に戦災死。長男の源一は昭和十九年に南方で戦死している。