Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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こうじん

行人

夏目 漱石

Leggi 行人 (こうじん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 224.801 caratteri · 452 schermate

Aozora Bunko

「じゃ今夜が御別れだから、少し御過ごしなさい」と母が勧めた。

あいにく自分の家族は酒に親しみの薄いものばかりで、誰も彼の相手にはなれなかった。それで皆な御免蒙って岡田より先へ食事を済ました。岡田はそれがこっちも勝手だといった風に、独り膳を控えて盃を甜め続けた。

彼は性来元気な男であった。その上酒を呑むとますます陽気になる好い癖を持っていた。そうして相手が聞こうが聞くまいが、頓着なしに好きな事を喋舌って、時々一人高笑いをした。

彼は大阪の富が過去二十年間にどのくらい殖えて、これから十年立つとまたその富が今の何十倍になるというような統計を挙げておおいに満足らしく見えた。

「大阪の富より君自身の富はどうだい」と兄が皮肉を云ったとき、岡田は禿げかかった頭へ手を載せて笑い出した。

「しかし僕の今日あるも――というと、偉過ぎるが、まあどうかこうかやって行けるのも、全く叔父さんと叔母さんのお蔭です。僕はいくらこうして酒を呑んで太平楽を並べていたって、それだけはけっして忘れやしません」

岡田はこんな事を云って、傍にいる母と遠くにいる父に感謝の意を表した。彼は酔うと同じ言葉を何遍も繰返す癖のある男だったが、ことにこの感謝の意は少しずつ違った形式で、幾度か彼の口から洩れた。