Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
こうじん
行人
Leggi 行人 (こうじん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 224.801 caratteri · 452 schermate
それで母の眠を妨げないようにそっと蒲団の上に起き直った。それから蚊帳の裾を捲って縁側へ出る気で、なるべく音のしないように障子をすうと開けにかかった。すると今まで寝入っていたとばかり思った母が突然「二郎どこへ行くんだい」と聞いた。
「あんまり寝苦しいから、縁側へ出て少し涼もうと思います」
「そうかい」
母の声は明晰で落ちついていた。自分はその調子で、彼女がまんじりともせずに今まで起きていた事を知った。
「御母さんも、まだ御休みにならないんですか」
「ええ寝床の変ったせいか何だか勝手が違ってね」
自分は貸浴衣の腰に三尺帯を一重廻しただけで、懐へ敷島の袋と燐寸を入れて縁側へ出た。縁側には白いカヴァーのかかった椅子が二脚ほど出ていた。自分はその一脚を引き寄せて腰をかけた。
「あまりがたがた云わして、兄さんの邪魔になるといけないよ」
母からこう注意された自分は、煙草を吹かしながら黙って、夢のような眼前の景色を眺めていた。景色は夜と共に無論ぼんやりしていた。月のない晩なので、ことさら暗いものが蔓り過ぎた。そのうちに昼間見た土手の松並木だけが一際黒ずんで左右に長い帯を引き渡していた。