Classici giapponesi con furigana
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せいりんず
西林図
久生 十蘭
Leggi 西林図 (せいりんず) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.309 caratteri · 21 schermate
「この落葉には巧のあとが見えます。これは毎朝、敷きなおさせるんですね。あんなひとだから、仏蘭西の秋の追懐には、いい知れぬ深さがあるのでしょうが、こんなところまで眼を利かせるというのは、ともかく、うるさい老人です」
というと、カサコソと落葉を踏んで、先に立って歩きだした。
落葉の道を行きつくすと、だしぬけに、ひろびろとした池がひらけた。汀石は根入りが深く、池のむこう岸は、水のきらめきがそれと暗示するだけで、曖昧に草のなかに消え、水と空がいっしょになって、倪雲林の「西林図」にある湖でも見ているような茫々とした感じを起こさせる。
蘆雪庵の系統をひいているのか、池の汀に紅葉した白膠木が一本あるだけで、庭木らしいものはひとつも見あたらず、夕風に揺れて動く朱の色が、清逸の気にみちた簡素な空間に荘重な彩りをあたえていた。
冬亭は秋草のなかに分け入って、あちらこちらと池の岸をながめまわしていたが、そのうちに、ひどくはしゃぎだして、
「あそこに鶴がいる……見えますか。むこうの石杭のうえに」
と、殊更らしく大きな声をだした。
水門のほうへゆるく弧をひろげた池の隈の、そこだけが夕陽で茜色に染まった乱杭石のうえに、煤ぼけた真鶴が一羽、しょんぼりと尾羽を垂れて立っている。