Classici giapponesi con furigana
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おやばかにゅうどうき
親馬鹿入堂記
尾崎 士郎
Leggi 親馬鹿入堂記 (おやばかにゅうどうき) di 尾崎 士郎 (おざきしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.182 caratteri · 24 schermate
その前の晩、お前のお母さんが、金色の猫が胎中に入るという夢を見た。このお伽ばなしのような出来事も、お前が立派に成長したときには、たのしい伝説の一つになるであろう。お前はそのはなしをお前の母と姉からもっと、こまごまときくがいい。金環蝕は陰の極で、秒後は陽のはじめというのだから、お前は陰が極まって、陽にうつろうとするときに、呱々の声をあげたのだ。お父さんは、そのとき敗戦の余波をうけて追放され、文筆業者として自由に活動する機会を封じられていた。自然の運行も陰の極であったが、お父さんの生活もまた陰の極であった。正しい意味において、お父さんの三十年にわたる文学的生涯は、此処に幕をとじたということにもなろう。お父さんの業績はすべて文学史の外へ置き忘れられねばならぬような結果になってしまったのだ。そういう環境がいかにもどかしく、悲しく、憤ろしいものであるかということを、お前は充分理解するであろう。お父さんの存在はジャーナリズムによって、ことごとく遮断された。唯、生きていることだけが辛うじてゆるされたことの全部であるといってもいい。考えようによっては男子の本懐でもあるが、お父さんは、この難境に突き落されることによって発奮した。