Classici giapponesi con furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Leggi 道標 (どうひょう) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 846.457 caratteri · 1672 schermate
わたし、行ってくるわ」
佐々の一家はモンマルトルの「赤馬」というレストランで、のんびりと居心地よく、長い時間をつぶして帰って来たところだった。電報は、午後二時発信となっている。伸子は、そのときから今まで自分たちが過した時間の内容を考えて一層切ないこころもちだった。ハンド・バッグをあけ、もっている金高をしらべた。
「わたし、多分こんやは、あっちへ泊りますから」
泰造も外へ出て、伸子のためにタクシーをつかまえた。
「おそくなったら、あしたの朝になってから、かえりなさい、夜中でなく」
「そうします」
そして、タクシーは走り出した。ロンドンへ立つまで、よく夜更けに、素子と一緒に通った道すじ――トロカデロのわきからセイヌ河をむこう岸にわたる淋しい道順を通って。
デュト街へはいったとき、朝の早いこの辺の勤勉な住人たちの窓々はもう半ば暗くなっていた。寝しずまろうとしている街のぼんやりした街燈の光をはらんで何事もなかったように入口をあけている磯崎の住居の階段を、伸子は爪先さぐりにのぼって行った。磯崎恭介は死んだ。妻と子とをのこして。それだのに、彼の一家が住んでいる建物のどこにも、その不幸のざわめきさえ感じられない。