Classici giapponesi con furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Leggi 道標 (どうひょう) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 846.457 caratteri · 1672 schermate
深まってゆく秋の夜ごとの大地の湿りと、昼間じゅうつよい日光に乾かされている鋼色の樹の葉のかおりがとけあって、落葉ですべりかけたり、踵の低い散歩靴のさきでわざと落葉をかき立てるようにしたりして伸子が歩いてゆく森の小道には、こころよいシャンパンに似た匂いが漂っていた。
「ああいい気もち!」
クラマールの森が浅くて、そこに生えている樹の枝々をよく日光がさし透し、落葉樹の多いことも秋の美しさだった。
「みなさん、毎年こんないい十月を、ここで暮していらしたの?」
「そうですよ。うそでなく素晴らしいでしょう」
画家らしく瞼の上に表情のあるすばしこい眼で柴垣弘三が答えた。
「ですからね、ここへこして来ると、誰でも二年目ぐらいにはぼーっとしちゃうんです」
「ほんと?」
伸子は蜂谷良作をかえりみた。蜂谷良作は、いつもの黒いソフトをかぶって伸子のわきを重く歩いていた。
「そんなこともないだろう」
柴垣は、とぎれとぎれの口笛をふいて歩きつづけていたが、やがて蜂谷のまともな返事を諷刺するように、ひとりごとめかして云った。
「――君はおそらく非常に健康な人なのかもしれないな、クラマールの気候に影響されると感じるのは、われわれみたいな、ひよわい人種だけなのかもしれない」