Classici giapponesi con furigana
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ななこ
野菊の墓
伊藤 左千夫
Leggi 野菊の墓 (ななこ) di 伊藤 左千夫 (いとうさちお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 71.271 caratteri · 144 schermate
おとよさんはつと立ってきて髪の香りの鼻をうつまでより添う。そして声を潜めて、
「この間里から蜂屋柿を送ってくれたから省さんに二つ三つあげますよ」
おとよさんは冷たい髪の毛を省作の湯ぼてりの顔へふれる。省作も今は少し気が落ちついている。女の髪の毛が顔へふれた時むらむらとおとよさんがいじらしくなった。おとよさんは柿を省作の袂へ入れ、その手で省作の手をとった。こんな場合を初めて経験する省作はそのおとよさんの手をとり返しもせず、とられたままにおどおどしていた。とられた手に一層力がはいったと思うと、おとよさんはそのまま手を引き、燕のように身をひるがえして戸の内へ消えてしまった。省作はしばらくただ夢心地であったが、はっと心づいて見ると、一時もここにいるのが恐ろしく感じて早々家に帰った。省作はこの夜どうしても眠れない。いろいろさまざまの妄想が、狭い胸の中で、もやくやもやくや煮えくり返る。暖かい夢を柔らかなふわふわした白絹につつんだように何ともいえない心地がするかと思うと、すぐあとから罪深い恐ろしい、いやでたまらない苦悶が起こってくる。どう考えたっておとよさんは人の妻だ、ぬしある人だ、人の妻を思うとは何事だ、ばかめ破廉恥め、そんな事ができるか、ああいやだ、けれどおとよさんはどこまでも悪い人ではない、憎い女ではない、憎いどころ