Classici giapponesi con furigana
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おちぼ
野菊の墓
伊藤 左千夫
Leggi 野菊の墓 (おちぼ) di 伊藤 左千夫 (いとうさちお) in giapponese con furigana. JLPT N3. Tocca una parola per il significato.
N3 · intermedio · kanji e kana moderni · 25.621 caratteri · 52 schermate
矢野は元来才気質の男でないから、少しの事にも大木に相談せねば気が済まないというふうであった。ことに今度は東京にいるのだから、一散にやって来たのである。大木のほうでも矢野が頭脳のよいばかりでなく、性質が清くて情に富んでるのを愛している。
大木は待ち受けた人を迎えて、座につかぬうちから立ちながら話しかける。
「よく早く来られた、僕はどうかと思ってな。」
「少し迷ったんですが、お手紙を見て急に元気づいて出てきました。」
ふたりは賓主普通の礼儀などはそっちのけで、もうてんから打ちとけて対座した。
「君、ほこりを浴びたろう。ちょっと洗い場で汗を流しちゃどうか、ちょうど湯がわいてるよ。」
「えい風があんまり吹きますから。」
「そうか、そんな事はせんがいいかな。」
大木は心づいて見ると、この熱いのに矢野は、単衣の下に厚木綿のシャツを着ていた。大木はこころひそかに非常な寂しみを感じて、思わず矢野のようすを注視した。しかし大木はそんなふうを色にも見せやせぬ。すぐに快活な談話に移ってしまった。
「きょうは君にごちそうがあるぞ、この間台湾の友人からザボンを送ってくれてな。」
こういいながら大木は立って、そこの戸棚から大きなザボンを二つかかえ出した。