Classici giapponesi con furigana
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おちぼ
野菊の墓
伊藤 左千夫
Leggi 野菊の墓 (おちぼ) di 伊藤 左千夫 (いとうさちお) in giapponese con furigana. JLPT N3. Tocca una parola per il significato.
N3 · intermedio · kanji e kana moderni · 25.621 caratteri · 52 schermate
そのうち自分は何か重い重いある物を胸にかかえているような心持がして、そのまま足を運ぶことはできなくなって、自分はなお深い呼吸をいくたびか続けてから、道端にかた寄って水田を見つめつつ畔にしゃがんで見た。
「ひとりでも親があったら、ここらでこんな気持ちになりもしまい。」そんなことを考えた。
「そうだ、まったく親のないせいだろう。」
親のない故郷の寂しさということを自分は今現実に気づいたのだ。しゃがんだ自分はしばらく目をつぶって考えのおもむくままに心をまかせた。
考えてみればなつかしい記憶はたくさんにある。けれどもそれはみななつかしい記憶であって、今のなつかしさではない。そんなことを今考えるのはいやであった。
停車場へ行くらしいふたりの男が来る。後から馬を引いた者も来る。自分は見知った人ででもあるとおかしいと思ったが、立たなかった。
それでも自分はそれに気が変わってたもとから巻きたばこを探った。二三本吸ううちに来た男どもは村の者ではないらしかった。「十二時には少し間があるだろう。」こう思った自分はまだ立つ気にならなかった。
千葉を出る時に寒い風だなと思ったが、気がついて見ると今は少しも風はない。