Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きんろう

金狼

久生 十蘭

Leggi 金狼 (きんろう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 89.438 caratteri · 179 schermate

Aozora Bunko

「えッ、それが?」

「それが、無政府共産党の仕業だったんだね。(それから、眼をつぶりながら)その、共犯の一人がすぐま近にいる」

「ええ、それで?」

「あとは言えないのだから訊かないでくれ。……要するに、そういうわけだ、想像にまかせる」

ボーイが名刺を持ってはいってきた。葵はほとんど本能的に立ちあがって名刺を受けとると、その名の上へす早い一瞥をくれた。名刺には厳しい四号活字で、

〈兵庫県警察部特別高等課 山瀬順太郎〉

と刷ってあった。

久我は名刺を見ると、急に顔をひきしめて、そのひとに階下の控室ですこし待っていてくれるように、と、ボーイにいうと、手早く服を着換えはじめた。

葵のこころに明るい陽のひかりがさしこんできた。しらじらとした部屋の趣も、どんよりとした空のいろも、さっきほどわびしくは思われなくなった。

久我は葵を絲満の加害者だと信じているわけでも、彼が身分を偽っていたのでもなかった。すこし厳格すぎる警察官のひとりに過ぎなかったのである。葵にはすこし放埓にも見えた彼は、じっと銀行ギャング事件の犯人をつかまえるために、目に見えぬ活動をつづけていたのだった。