Classici giapponesi con furigana
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きんろう
金狼
久生 十蘭
Leggi 金狼 (きんろう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 89.438 caratteri · 179 schermate
「……すこし話していらっしゃいまし。……それともなにか御用でしたか」と、いった。用事がなかったら早く出てゆけ、といわんばかりであった。
葵はそれどころではなかった。頁を繰るのももどかしいようにして、ようやく特高課の番号をさがし出すと、久我千秋を出してくれ、とたのんだ。すると、そんな人間はこっちにいない、ほかの課のまちがいではないか。庶務課へかけてきいて見るがいい、という返事だった。庶務課へかけると、本庁にはそんな名のひとはいない。ほかの署へたずねて見なさい、といって、電話を切ってしまった。
葵は電話室の壁に凭れてぼんやりと立っていた。ほかの署などに聞き合わす必要はない。久我は毎朝、警視庁へゆくといって出てゆくのだ。久我は警官ではない。……いままであたしを欺していたのだ。しかし、いったいなんのために。……頭が麻痺したようになって、なにひとつ満足な答を得られなかった。
電話室のカーテンをまくって、乾が首をさしいれた。
「……葵嬢、そんなところでなにしてる。……おや、ひどく蒼い顔をしてるが、気分でも悪いんじゃないのかね。……まあ、こっちへ、こちらへ」
と、いいながら、葵の手をとって長椅子に掛けさせた。