Classici giapponesi con furigana
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きんろう
金狼
久生 十蘭
Leggi 金狼 (きんろう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 89.438 caratteri · 179 schermate
明るい照明のなかで、いろいろなたべものが忌々しいほど鮮やかな色して並んでいた。
久我は昨日の昼からなにも喰べていなかった。胃酸が胃壁を喰いはじめている。そのへんが燃えるようだった。いま掌に五十銭銀貨をひとつ握っている。無意識になかへ入って行こうとした。……しかし、葵もやはり昨日から喰べていないのだ。窓から身体をひき剥すと、またのろのろと三丁目のほうへ歩きだした。
乾のところへ穂高ゆきの旅費を借りに行って、いま、けんもほろろに断わられてきたところだった。あんな得体のしれない女と同棲している男に信用貸など出来るものか。別れてきたら用達てましょう。ま、当座のご用に、といって五十銭玉をひとつ差しだした。乾だけがめあてだったので、眼が眩むような気がした。
神戸から帰って以来、久我は毎朝警視庁へゆくといって家を出ると、四谷見附まで歩いて行き、夕方までの長い時間をもてあましながら、そこの土手で寝てくらしていた。葵が身の皮を剥ぐようにしてやっていることはよく知っているのだが、職をさがすとしても、はじめての東京にはひとりの知人もなく、そもそものキッカケさえつきかねる。