Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きんろう

金狼

久生 十蘭

Leggi 金狼 (きんろう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 89.438 caratteri · 179 schermate

Aozora Bunko

涙があふれてきて、止めようがなかった。

乏しい木立の梢をわたって、涼しい風がふきこんできた。葵はうとうとしかけた……

廊下のはしに久我があらわれた。大股で近づいてくると、おしだすような声で、

「やあ……」

と、いった。唇がぴくぴくと動いた。咄嗟に、なにもいえない風だった。

葵は、とろんとした眼を半分ひらいて久我を見る。いっぺんに眼がさめた。

「ひどかったでしょう」

「なんでもなかった。……もうきょうは帰ってもいいんですって」

わざと投げやりな調子で、いった。こんな風にでも言わなければ、わっ、と泣きだしてしまいそうだった。

久我は、撫でさするような眼つきで葵を眺めていたが、急に葵の手の甲を指すと、驚いたような顔で、たずねた。

「どうしたんです、これは」

「……虫づくし、よ。……蚤、蚊、虱、南京虫。……辛かってんわ」

そして、微笑してみせた。……うまく笑えなかった。

久我は、すこし険しい顔になって、

「それは、ひどい。……それで、どうだっていうんです、警察じゃ」

「虫も殺さないような顔で大それたことをしやがって……」

「ひどいことをいう!」

「慾ばりのむくいよ」

久我は、葵のそばへ並んで坐りながら、