Classici giapponesi con furigana
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すずきもんど
鈴木主水
久生 十蘭
Leggi 鈴木主水 (すずきもんど) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.827 caratteri · 26 schermate
「いや、なんでもない」
お安はまた縫物を取りあげた。
お安はなにか考えているが、なにを考えているのか主水にはわからない。女というものは誰もみな覗きこんでも底の見えない、深い淵のようなものを一つずつ胸のうちに持っているように思えてならない。
「女の心はわからない」
主水は口のなかで呟いた。
後の月見の宴で、主水は群舞にまぎれてお糸の方を刺すつもりだった。もっとも、お糸の方と限ったわけではない。押原右内でも、多介子でも、ねずの三武でも、誰でもよかったが、おなじ目ざましをくれるなら、花々しいほうがよかろうと思ったのである。
一藩の仕置をつかさどる譜代の重役が、卒爾なざまで逃げるようにこそこそと退散するのを、主水は遺憾に思っていた。家中の違和に非理をたてようとすると、かえって禍を大きくするということを、これまでの例で身に染みて承知した。争うことは内輪の紛擾を外部に発表する愚を招くだけでしかない。対立は禁物だ。家中の乱れは隠秘するにかぎる。見ていれば言いたいことも出てくるが、見なければ意見もない道理で、身を退くことがすなわち忠義なのである。趣意のすじはよく通る。