Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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いんじゅう

陰獣

江戸川 乱歩

Leggi 陰獣 (いんじゅう) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 66.968 caratteri · 131 schermate

Aozora Bunko

「君、この手袋の釦のとれた時を覚えているかね」

「それは初めからとれていたんです」運転手は妙な顔をして答えた。「貰いものなんでね、釦がとれて使えなくなったので、まだ新しかったけれど、なくなった小山田の旦那が私に下すったのです」

「小山田さんが?」私はギョクンと驚いて、慌だしく聞返した。「今僕の出て来た小山田さんかね」

「エエ、そうです。あの旦那が生きている時分には、会社への送り迎いは、大抵私がやっていたんで、御ひいきになったもんですよ」

「それ、いつからはめているの?」

「もらったのは寒い時分だったけれど、上等の手袋で勿体ないので、大事にしていたんですが、古いのが破けてしまって、今日初めて運転用におろしたのです。これをはめていないとハンドルが辷るもんですからね。どうしてそんなことを御聞きなさるんです」

「いや、一寸訳があるんだ。君、それを僕に譲って呉れないだろうか」

という様な訳で、結局私はその手袋を、相当の代価で譲受けたのであるが、部屋に入って、例の天井裏で拾った金物を出して、比べて見ると、やっぱり寸分も違わなかったし、その金物は手袋のホックの坐金にもピッタリとはまったのである。