Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
がん
雁
Leggi 雁 (がん) di Mori Ōgai (森 鴎外) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 73.950 caratteri · 147 schermate
触れた後に纔かに贏ち得る冷静な心と同じような心になった。この心に翻弄せられるのを、末造は愉快な刺戟として感ずるのである。それにお玉は横着になると共に、次第に少しずつじだらくになる。末造はこのじだらくに情慾を煽られて、一層お玉に引き附けられるように感ずる。この一切の変化が末造には分からない。魅せられるような感じはそこから生れるのである。
お玉はしゃがんで金盥を引き寄せながら云った。「あなた一寸あちらへ向いていて下さいましな」
「なぜ」と云いつつ、末造は金天狗に火を附けた。
「だって顔を洗わなくちゃ」
「好いじゃないか。さっさと洗え」
「だって見ていらっしゃっちゃ、洗えませんわ」
「むずかしいなあ。これで好いか」末造は烟を吹きつつ縁側に背中を向けた。そして心中になんと云うあどけない奴だろうと思った。
お玉は肌も脱がずに、只領だけくつろげて、忙がしげに顔を洗う。いつもより余程手を抜いてはいるが、化粧の秘密を藉りて、庇を蔽い美を粧うと云う弱点も無いので、別に見られていて困ることは無い。
末造は最初背中を向けていたが、暫くするとお玉の方へ向き直った。顔を洗う間末造に背中を向けていたお玉はこれを知らずにいたが、洗ってしまって鏡台を引き寄せると、それに末造の紙巻を銜えた顔がうつった。