Classici giapponesi con furigana
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くものこみち
雲の小径
久生 十蘭
Leggi 雲の小径 (くものこみち) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 16.634 caratteri · 33 schermate
柚子のほうでは、こわいほど美しいおばさまというような言いかたで、しっぺいがえしをする。香世子が生きているあいだじゅう、ひっぱたく、打ちかえすという野蛮な喧嘩を、日課のようにくりかえしていたが、継母継娘といっても、こんな軋んだ親子もないものだと、白川は驚嘆しながらながめたものだった。
「あゝ、柚子さん」
「えゝ、柚子よ。思いだしてくだすって、ありがとう。大阪を飛びだすときから、気がついてくださるかと、期待していたんですけど、だめだったわ」
「もう、五年になりますか。お宅へ伺っていたころは、ディヴァンに寝そべって、漫画の本を読んでいたひとでしょう。ひどく大人くさくなって、むかしの面影なんか、どこにもないから、思いだせといったって、それは無理です」
「むかしの面影って、むかしのあたしを知っているつもり? うちの香世子にばかり夢中になって、ときたま食堂でなんかお逢いしても、あたしのほうなんか、見たことがなかったじゃ、ありませんか」
「そうだったかね」
「えゝ、そうだったのよ、あなたから眼を離したことがなかったから、あたし、よく知っている。あのころ、あなたに恋していたんだわ、きっと」