Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あおひげにひゃくはちじゅうさんにんのつま

青髯二百八十三人の妻

久生 十蘭

Leggi 青髯二百八十三人の妻 (あおひげにひゃくはちじゅうさんにんのつま) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.736 caratteri · 28 schermate

Aozora Bunko

二

「要らないから捨てたんだろう。また欲しくなったのか」

「それは、おれのものだから返せというんだ。さもなかったら、その穴へ捨てろ」

刑事は手帳を返しかけたが、あまりしつっこくせがむので、なんだか妙だと思った。それで渡しかけていた手をひっこめ、

「ともかく、これは預っておく」

といって手帳をかくしにおさめた。

眼にもとまらぬこの一転機を、これこそ神の摂理であったなど、尤もらしくこじつけているものもあるが、ほんの一分ほどのやりとりのなかに、たしかにそうもいえる微妙な意志の疎通といったようなものが感じられる。その刑事は後になって、ぞっと総毛立つのだが、手帳に書きつけてあった一連の符牒がなかったら、そのとき、なにげなく手帳を渡していたら、ランドリュの全犯行の十分の一ほどのものすら探りあてることはできずにすんでいたことだったろう。

二

ランドリュの手帳に書いてあった符牒とは、つぎのようなものであった。

1 マダム・クゥシェ

ヴェルヌイユ駅行片道切符二枚 十スゥ

2 資産約六万フラン、有価証券二万フラン、家具一万フラン、宝石一万八千フラン(ブレジル)

ブレジル――一九一五年六月十五日