Classici giapponesi con furigana
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まぞう
魔像
林 不忘
Leggi 魔像 (まぞう) di 林 不忘 (はやしふぼう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 131.494 caratteri · 260 schermate
ここ……神田帯屋小路、油障子に筆太に書かれた喧嘩渡世の四字、その家の中では、お絃の姐御が、長火鉢の前に立て膝をして、何やらブツクサつぶやいている。
「おそいねえ。どうしたんだろう――?」
と、さしずめ、うしろの柱時計でも見上げるところだが、享保の昔で、時計なんてものはないし、第一、そんな、郊外の文化住宅でサラリーマン夫人がハズバンドの帰りを待ってるような、そんな生易しい場面ではないのだから、お絃の顔つきもいささか緊張している。もっとも、ふだんから、どっちかというと緊張した顔つきのお絃姐御なのだが……例によって、火鉢の薬罐に一本ほうりこんで、御意見無用いのち不知の文身を見せながら、ちょいちょい指さきで摘まみ上げてみては、またズブリと湯へ落しながら、
「アアア、何か間違いでもなければいいけど――今夜は、二人揃って本郷追分のうなぎ畷、長岡頼母とかってやつんとこへ、斬り込みに行くとか言って出かけたんだったっけ……あたしも、これから行ってみようかしら」
ふかしていた長煙管をガラリ抛り出して、お絃がブラリと起ち上った時、
「御めん下さいまし……」
あわただしく表の戸があいて、転がるように跳びこんで来た若い女――息をはずませて、ピシャリ! はいって来た戸を締め切りながら、お妙は、お絃を見上げた。