Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖 (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 56.957 caratteri · 114 schermate
「なぜ?」
と、ふりかえったのは天堂一角。
根岸の闇で、法月弦之丞にやられた太刀傷が致命にいたらなかったまでも、かなり深傷であったとみえて、いまだに左手を首に吊っているのが、いかにも暴勇な剣客らしく目立って、往来の者が必ず、ふりかえってゆく。
「冗談じゃアねえ」
と、お十夜はふところ手で、
「もう江戸から四十里余り、三晩も泊りを重ねているのに、行っても行っても、万吉とお綱の姿が先に見当らねえじゃアねえか」
「そのことなら心配は無用だ。まさかに使屋の半次が、口から出放題なことを言いはしまい」
「それなら、もうたいがいに追いついている筈だが」
「イヤ大丈夫。実は小諸の立場で念入りに聞いておいたことがある。ちょうど、きのうの朝立ちで、それらしい二人づれが、間違いなくこの街道へ折れたという問屋場の話であった」
「ふウむ……そうか。すると今のところで、日数にしてたッた一日、道のりにして小十里しか離れていない勘定になる。それじゃ、もう一息で追いつけるだろう」
と、お十夜の語気は、景趣の変化につれて旅らしい軽快をもってきたが、周馬は、いっこう面白くない顔で、どこかで折った桑の枝を、杖とも鞭ともつかずに持って、一番あとからおくれがちに歩いてくる。